薬剤師は今後必要なくなる?現状や今後、将来のためにすべきことを紹介

この記事では、薬剤師の今後について詳しくまとめています。

薬剤師は今後必要なくなるのか。薬剤師の現状と今後、将来のためにすべきことについて紹介しているので、ぜひチェックしてみてください。

薬剤師は今後必要なくなる?

これまで、医療現場では薬剤師不足の状態が続いてきました。

しかし近年、薬学部の定員が増えたことや、医療費削減が推進されるようになったことから、今後薬剤師が余るようになるのではないかと懸念されています。

また、AI(人口知能)が医療現場にも導入される動きもあり、薬剤師の雇用が減っていくという意見が出ています。

ここでは、薬剤師の将来性が心配されている主な3つの理由について、詳しくまとめていきます。

薬学部の定員増

薬学部は平成18年度に4年制から6年制に変更になり、平成15年以降に薬科大学の新設や薬学部の定員の増加が始まりました。

薬科大学と薬学部の数は平成14年の46から15年間で70を超え、定員が13000人台に急増したことで、薬剤師の供給増加に拍車がかかり、薬剤師過剰時代がやってくると言われています。 

薬学部の新設をする大学側には、新たな設備投資が比較的少なくて済む中、履修期間が長くなったことで学費による収入が増える、求人が多い職種なので学生を集めやすい、といったメリットがあるのです。

今後も6年制薬学部の新設や定員増加が続くとどうなるのか、厚生労働省の研究班が2043年度までのシミュレーションをした報告もあります。

「薬剤師の総数としては、今後数年間は需要と供給が均衡している状況が続くが、長期的に見ると、供給が需要を上回ることが見込まれる」というものです。

国としても、薬剤師が過剰になる未来を懸念しているということです。

医療費の削減

2018年度診療報酬・介護報酬同時改定の議論のなかで、財務省は調剤報酬について「水準を十分に引き下げる」ことを要求していました。

薬剤師の仕事内容に対する評価が見直され、一部の調剤報酬点数が下げられたり、他の職種の人が代行するようになっていき、薬剤師の雇用が減ってしまう可能性があります。

財源である社会保障費の増大は、今後も国が取り組んでいく重要課題であるため、調剤報酬の改定はより厳しいものになっていくことが予想されます。

さらに、2019年4月に厚生労働省が発出した「調剤業務のあり方について」の通知により、薬剤師だけに認められていた仕事が、薬剤師以外でもできるようになりました。

ピッキングなど一部の作業について、要件を満たせば薬剤師以外の職員が代行できることが明示されたのです。

薬剤師よりも人件費が安く済む人が業務可能であれば、必然的に薬剤師の雇用は減っていくでしょう。

AIの登場

近年では、AI(人工知能)が目覚ましい発展をみせており、物流や接客業などで徐々に導入され、人手不足の解消に一役買っています。

薬剤師の仕事もその例外ではなく、単純作業などはAIに代替されるとされています。

実はすでに、医薬品情報業務を中心にAIの導入がすすめられています。

AIを活用した、医薬品の問い合わせに対応できるシステムの開発が構想されているのです。

将来的には、今まで薬剤師が行っていた医薬品に関する問い合わせへの対応を、AIに代替してもらうことが可能になるでしょう。

また、薬局では服薬指導の支援をするAIシステムの開発もすすんでいます。

どのような服薬指導をすればよいかをAIが推奨してくれるもので、薬歴の記載漏れを防ぐこともでき、業務効率化につながります。

さらに今後、調剤業務等にもAIが導入されていくと考えられています。

そのため、機械やAIを活用したシステムで代替できる仕事しかできない薬剤師は、将来的には仕事を奪われてしまう可能性があります。

薬剤師の現状

薬剤師の需要がなくなっていく可能性について書いてきましたが、現状、薬剤師は不足しており、すぐに解消されるものではありません。

2019年4月厚生労働省発表の医師・薬剤師の有効求人倍率(パート含む)は3.77倍、全職種の有効求人倍率(パート含む)は1.38倍です。

有効求人倍率は、1.0倍を超えると求職者数より求人数が上回っているということになります。

今のところ、他の職種に比べると、薬剤師はまだまだ売り手市場といえます。

しかし2016年4月の同数値は、医師・薬剤師は6.24倍ですので、ここ5年の間に、医師・薬剤師の人手不足は解消の方向にむかってきているということになります。

現在、薬剤師は毎年1万人近く増加しており、さらに老後の生活に対する不安から、定年後も仕事を続ける薬剤師が増えています。

そのため、スキルアップを怠っていると、今後は徐々に転職や再就職が難しくなってきます。

【年齢・職場別】薬剤師の今後

今後、薬剤師の仕事はどうなっていくのでしょうか。

薬剤師の仕事内容は職場ごとに異なりますが、基本的に薬剤師は仕事が多く、忙しいのが現状です。

しかし今後は、単純作業や対物作業は薬剤師の仕事ではなくなり、より専門性の高い仕事を求められるようになってきます。  

ここから、薬剤師の職場別に、今後薬剤師の仕事ではなくなる可能性のある仕事内容と、どのようなスキルが求められているかについてまとめていきます。

調剤薬局

ピッキングや錠剤の一包化、粉薬の調合などは、今後さらに機械化が進んだり、AIに代替されていく可能性が高いといわれています。

そのため、調剤薬局で調剤業務しかできない薬剤師は、いずれ需要がなくなっていくでしょう。

そして、これから調剤薬局の薬剤師が身につけるべきなのは、かかりつけ薬剤師としてのスキルと在宅医療のスキルです。

どちらも医療費の削減につながるので、薬剤師の仕事として期待されており、診療報酬点数にも反映されています。

(かかりつけ薬剤師制度により残薬調整が積極的に行われ、薬剤料の削減に、入院せずに在宅医療にシフトすることで、入院に伴う医療費の削減につながります。)

そのため、かかりつけ薬剤師や在宅医療の知識や経験がある薬剤師は、需要が高くなります。

また、かかりつけ薬剤師になるには様々な条件がありますが、まずは患者さんから指名を受ける必要があります。

そのため、患者さんとのコミュニケーション能力も大事になってきます。

ドラッグストア

医療費削減のためにも、国はセルフメディケーションを推進しており、自分で一般用医薬品を購入して治したり、病気になる手前でケアをする=予防医療をする時代になってきています。

予防医療の時代で特に活躍が期待されるのがドラッグストアの薬剤師であり、これまで以上にOTCを適切に販売するスキルを身につけることが求められます。

ドラッグストアの薬剤師の主な仕事はOTCの販売ですが、品出しやPOP作成、レジなどの仕事も任されることが多いです。

しかし、レジについてはセルフレジの導入が進むと、完全に機械化されます。

そのため、品出しやPOP作成については薬剤師以外の人の仕事になると考えられます。

数ある医薬品の中から、最も適した商品を選択して提供するために、お客さんから必要な情報を聞き出す力、コミュニケーション能力も重要です。

病院

病院の薬剤師の重要な業務として病棟業務があります。

各病棟に薬剤師を1名ずつ配置している病院も多く、医師や看護師などの他業種との連携も必要になります。

病院薬剤師がチーム医療の一員として活躍するためには、医薬品や病気に関する知識だけでなく、患者さんや他の医療職者とのコミュニケーション能力をもつことが大切です。

病棟で働く薬剤師は、入院患者に対して適切な薬物治療が行われているかモニタリングし、場合によっては処方変更の提案をします。

その結果、医療過誤を防いだり治療期間を短縮することにつながるため、病棟業務はこれからも薬剤師に期待される仕事内容です。

また、薬局同様、ピッキングや錠剤の一包化、粉薬の調合などは、今後さらに機械化が進んだり、AIに代替されていく可能性が高いといわれています。

ただ、調剤薬局と異なるのは、病院の薬剤師の調剤業務には注射薬の調剤があるところです。

注射薬には、急性期医療に用いるものや抗がん剤なども含まれているので、とりわけ注意を要する仕事になっています。

注射薬を無菌室で無菌製剤処理する仕事もあり、このあたりは完全に機械化するのは難しいと考えられます。

企業

企業につとめる薬剤師は、薬局や病院の薬剤師と比べると患者さんと接する機会が少なく、AIによる代替業務の種類は多くなる可能性があります。

しかし、対「人」に関わる仕事はAIによる代替は難しいと言われており、治験に関わる開発職・営業職などの仕事は今後も企業薬剤師の活躍の場となると考えられます。

いずれも高い専門知識とコミュニケーション能力が求められており、継続したスキルアップと経験を積むことが望まれます。

一方、医薬品情報業務=DI業務は、すでに医療機関でAIの導入が進められており、製薬企業においても同じようにAIが導入される動きが出てくると考えられます。

社内・社外からの医薬品に関する問い合わせに、将来はAIが対応するという可能性もあります。

また、品質管理や在庫管理業務などの対物業務も、AI導入がしやすい仕事です。

そのため、企業の学術職や管理薬剤師が行う業務は、AIに代替されていく可能性があります。

薬剤師が今後に備えて行うべきこと

いくらテクノロジーが発展し、AIが次々と医療現場に導入されたとしても、薬剤師の業務すべてを代替できるわけではありません。

機械化やAIによる代替により業務の効率化が進む中、本当に薬剤師がすべき仕事は何であるかを考える時に来ています。

AIと共存することで、より薬剤師としての職能を発揮できる時代になっていくと考えられます。

ここでは、これからの薬剤師にどのようなスキルアップ・キャリアアップが求められるか、AIに代替できない、人にしかできない仕事は何なのかについてまとめていきます。

スキルアップ・キャリアアップ

これからの薬剤師は、他職種の人やAIにとって替わられないためにも、より専門性の高い仕事と対応力が求められます。

たとえば調剤薬局の薬剤師であれば、かかりつけ薬剤師としてのスキルが重要と先述しましたが、かかりつけ薬剤師になるには「研修認定薬剤師」である必要があります。

さまざまな団体が研修認定薬剤師に認定していて、認定薬剤師の種類は50種類以上あります。これからの薬剤師の仕事のひとつとして期待されている、在宅医療のスキルアップにつながるものとして、「在宅療養支援認定薬剤師」というものもあります。

こういった認定薬剤師の資格をとることで、より専門的な知識が身につきます。

また、教科書通りの知識だけでは対応できないトラブルがあった場合は、AIではなく人である薬剤師の対応力が必要になると考えられます。

そこで対応できる薬剤師になるには、それなりに現場で経験をつんでいないといけません。

知識や資格だけでなく実践を積んでいくことで、AIには対応できないケースに対応できるようになる必要があります。

人にしかできないこと(経験値)×地方

「患者さんの話に共感する」「患者さんの悩みを聞き、不安を取り除く」ということは、人である薬剤師にしかできません。

また、AIは膨大なデータをもとに作られたシステムになりますが、前例のないまれなケースに対面したとき、やはり人が考えて対応していく必要があります。

いずれも、薬剤師としてある程度の経験を積んでいなければ、対応していくことは難しいでしょう。

また、薬剤師は都心部では過剰となっている一方で、地方では人手不足が続いています。

そのため、地域によっては高条件で求人を出している薬局もみられます。

機械化やAI導入は、全国で一斉にスタートするわけではないと思われます。

すると、財政面や医療需要の面からも、地方はシステムの導入が遅れる可能性があります。

そうなった場合、地方での薬剤師需要は比較的高いまま保たれていくと予想されます。

薬剤師過剰時代をむかえるにあたり、働く場所を考えていくことも必要になります。

薬剤師の転職におすすめの転職サイト

これからの転職を考えたとき、今後も必要とされる薬剤師になるためのスキルアップ・キャリアアップが可能な転職をしたいものです。

そのためには、自分にあった求人を紹介してもらえる転職サイトに登録するのが有効です。

ここからは、薬剤師の転職におすすめの転職サイトを5つ紹介します。

薬キャリエージェント

薬キャリエージェント

エムスリーという、医療情報専門サイトを運営している転職サイトで、医療業界に強いコネクションがあります。

そのため、病院や製薬会社など、一般的には求人数が少なくて人気のある求人もそろっていると、評判です。

年間20,000人もの薬剤師が利用しており、登録者数は業界No.1です。薬剤師が転職を考えたら、まず利用すべき転職サイトと言えるでしょう。

薬キャリエージェントが運営している「薬キャリmama」というサイトでは、子育てと仕事の両立に役立つ情報がのっており、ママ薬剤師の求人検索も可能です。

ファルマスタッフ

ファルマスタッフ

大手調剤薬局チェーンの日本調剤グループが運営してきたファルマスタッフは、調剤薬局とのつながりが強いことで業界でもよく知られている転職サイトです。

公開求人数は5万5千件以上で、47都道府県に対応しています。

サイト登録後は、個別面談をしてから求人紹介となります。

面接サポートもしてもらえるので、初めて転職をする人にもおすすめです。

大手や地方密着型でチェーン展開している調剤薬局だけでなく、個人レベルの店舗の求人も紹介してもらえます。

また、ファルマスタッフは派遣会社としての機能にも力を入れています。

教育体制、福利厚生も充実している派遣会社を運営しているので、派遣で働きたいと考えている人にもおすすめです。

リクナビ薬剤師

リクナビ薬剤師

リクルートという、人材紹介等を行っている大手の会社が運営する転職サイトです。

大手の調剤薬局チェーンやドラッグストア、有名企業の求人を中心に紹介してくれます。

公開求人数は3万5千件以上です。

リクナビ薬剤師は、非公開求人が多いというのも評判です。

条件がよい求人やレアな求人は、非公開であることが多いです。

そのため、漢方薬局や製薬系企業など、人気のある非公開求人も紹介してもらえることがあります。

ただし、派遣の求人は紹介していないので注意してください。

コンサルタントとは、基本的に電話やメールでのやりとりなので、忙しい薬剤師も相談しやすいです。

電話やメールのレスポンスも早く、紹介してもらえる求人数も多いので、早く転職したい人にも向いています。

マイナビ薬剤師

マイナビ薬剤師は、マイナビという人材紹介等を行っている大手の会社が運営する転職サイトです。

公開求人数は5万5千件以上です。

マイナビは、転職者との面談に力を入れており、サポート体制が充実していると評判です。

丁寧にサポートしてもらえるので、特に転職が初めての人におすすめです。 

求人は、ドラッグストアや製薬企業の紹介が特に豊富です。

ただし、派遣の求人は紹介していないので注意してください。

また、マイナビ薬剤師はブランクがある薬剤師の復職支援相談会や、転職セミナーなども実施しています。

出産・子育てを経て長期間ブランクがあって復職したい場合や、未経験の業界への転職の場合は、こういったコンテンツを活用するのもよいです。

まとめ

これから先いつか、薬剤師が過剰になる・AIに代替される時代が来ることはほぼ間違えないでしょう。

薬学部の新設や定員増加については、すでに厚生労働省でも問題提起されており、この点については問題解決にむかう可能性はあります。

一方で、AIが薬剤師の仕事を減らすという可能性は高いです。

しかし、AIの登場によってなくなる仕事は、もともと効率化されるべき仕事内容だったと考えることもできます。

本当に薬剤師に求められている仕事とは何なのかを考え直す時期に来ています。

そして将来、AIと薬剤師が仕事を分担することで、薬剤師は、よりニーズにあった専門性の高い仕事をすることが可能になるのです。