薬剤師として自衛隊で働ける?仕事内容や働くための方法を解説!

薬剤師でも自衛隊で働くことができるのを知っていましたか?

自衛隊は薬剤師には無縁の世界に見えますが、実は自衛隊にも薬剤師が勤務しています。

この記事では、自衛隊にいる薬剤師仕事内容、年収給料、薬剤師が自衛隊で働くメリット・デメリット、試験内容や応募資格・条件についてなど、1つ1つ丁寧に解説していきます。

自衛隊で働く薬剤師について興味のある方は、ぜひ参考にしてください。

薬剤師自衛隊で働くには?基本情報から働くまでの流れを解説

自衛隊で働く薬剤師のことを「薬剤官」と呼びます。薬剤官の仕事は一般的な薬剤師の仕事内容と大きく異なります。

薬剤官の仕事内容、給料などを見ていきましょう。

仕事内容

薬剤官の主な仕事は「自衛隊員の健康管理・衛生管理」と「自衛隊病院での調剤・投薬業務」の2つに分けられます。

地震や火山噴火など、国内で災害が発生した場合だけでなく、海外で緊急援助活動が必要になった際には、自衛隊員とともに薬剤官も現地に派遣されます。

前線で活動する自衛隊員の中には、薬を飲んでいる人、持病のある人、慣れない環境で体調を崩す人、支援活動中に怪我をする人など、薬剤師の需要が多いです。

そういった時に、隊員の体調管理や医薬品の輸送・在庫管理を行うのが薬剤官です。

また、一般の病院に勤務する薬剤師と同じように、自衛隊病院に勤務することもあります。

自衛隊病院は一般の患者も受け入れているため、自衛隊員以外と接することもできます。医師や看護師とチーム医療を実践し、薬剤師として必要な知識やスキルを身につけられます。

給料年収

自衛隊の薬剤師は自衛隊幹部候補生として入隊するため、初任給も高く設定されており、2019年1月1日時点で大学卒・大学院卒ともに月246,100円です。一般の病院薬剤師と比べ、初めから高収入を得ることができます。

平均年収は公表されていませんが、階級に応じて約400万〜820万ほどといわれています。年2回のボーナスも支給され、階級が上がれば昇給もするので、より高い待遇を狙えます。

国家公務員である薬剤官は福利厚生も充実し、収入面や福利厚生を重視したい方に薬剤官はとても魅力的です。

平均年齢

薬剤官の平均年齢は公表されていませんが、自衛官の平均年齢は近年上昇しています。防衛省によると、1990年に31.8歳だった平均年齢は、2017年には35.9歳まで上がっています。

ただし、薬剤官の応募条件は20歳以上28歳未満の年齢制限があります。薬学部を卒業するのは早くても24歳なので、挑戦できるチャンスは4回と限られていることは覚えておきましょう。

男性・女性の割合

男性社会というイメージが強い自衛隊も、男女雇用機会均等法の制定や女性活躍の推進の観点から、女性隊員も少しずつ増えてきています。ただ、女性の比率は平成29年度で全体のわずか6.5%と、まだ少数であるのは事実です。

ところが、薬剤師が所属する衛生科では事情が異なります。

薬剤官は陸上・海上・航空のいずれかの衛生科に配属されます。

少し古いですが、平成19年の統計によると陸上自衛隊衛生科の女性比率は24.7%と4人に1人が女性です。海上自衛隊衛生科の女性比率は8.1%、航空自衛隊衛生科の女性比率は10.6%です。

ただ衛生科には、薬剤師の他にも医師や歯科医師、看護師、准看護師などが所属しているため、薬剤師だけでなく看護師などが女性比率を押し上げていることは否めません。

いずれにせよ、一般の職場より女性の比率は低いといえるでしょう。

働くまでの流れ

自衛隊の薬剤師「薬剤官」になるためには、まず薬剤師の国家試験に合格し、そのあと自衛隊薬剤幹部候補生の国家試験に合格する必要があります。

幹部候補生の国家試験は、1次試験(筆記試験)と2次試験(小論文試験・口述試験・身体検査)があります。

つまり、自衛隊の薬剤官になるためには、薬剤師国家試験対策に加え、国家公務員試験の勉強もする必要があります。

全て合格し、晴れて隊したあとは、まず陸・海・空の各自衛隊曹長に任命されます。幹部候補生として約1年間の教育を受けた後、さらに約1年間薬剤師の実務研修を受け、ようやく薬剤官としてデビューします。

薬剤師自衛隊で働くメリット・デメリット

薬剤師が自衛隊で働くメリットやデメリットは、どんなものがあるのでしょうか。

メリットはもちろん、デメリットもしっかり考慮し、自分に合うか合わないか考える際のヒントにしてみてください。

メリット

給料が高め

上述しましたが、薬剤官の給料は、一般的な病院薬剤師や薬局薬剤師に比べて高く設定されており、初任給は2019年1月1日時点で、大学卒・大学院卒ともに月246,100円です。

年2回のボーナスに加え、任期ごとに支払われる「任期満了に伴うボーナス」も受け取れます。陸・海・空で支給額は異なりますが、2〜3年おきにある任期を2回終えた場合(4〜6年働いた場合)、通常の年収やボーナスとは別に合計200〜250万円支給されるといわれています。

給料が上がりにくいと言われる病院薬剤師と違い、自衛は階級が上がれば順調に昇給していきます。

給料、各種手当やボーナス、昇給を考えると、自衛隊の薬剤師は一般の薬剤師に比べ年収面は好条件です。

福利厚生が充実している

自衛隊の薬剤師は国家公務員のため、福利厚生も充実しています。

住宅手当や扶養手当に加え駐屯地内に住んだ場合は家賃が非常に安くなり、光熱費も基本的に無料です。食事代もほぼ無料でバランスの取れた食事が取れます。

週休2日制も導入しており、祝日や年末年始、夏季特別休暇や年次休暇など、年間休日数も多く、年に3回長期休暇(1週間程度)を取ることができます

その他、防衛省の共済組合が提携している保養施設や、リゾート施設、スポーツクラブなども割引価格で利用できます。

デメリット

薬剤師として働けるまでに時間がかかる

大学の在学期間を含めると、自衛隊に入って薬剤師として働けるようになるまで8〜9年間もかかります。

大学で6年学んだ後、薬剤師の国家試験と自衛隊幹部候補生の国家試験に合格することが、まず必要です。

試験日程は決められており、2020年4月ごろ入隊の場合、2019年3月1日〜5月1日に試験受付、5月中旬に1次試験、6月中旬に2次試験、7〜8月に合格発表です。このように1年かけて自衛になる準備を進める必要があります

卒業見込みでも応募はできますが、その場合は薬剤師の国家試験と並行して公務員試験の対策を進めなければいけません。

自衛隊幹部候補生の試験に合格し入隊した後、すぐに薬剤官になれるわけではありません。

入隊後はまず「初級幹部」となり、知識や技能を約1年間かけて訓練します。訓練期間は、戦技訓練など体力的に厳しい訓練もたくさん行います。

約1年間の訓練が終わったら、さらにもう1年「薬剤実務研修」を受けます。自衛隊における薬剤師の役割について、実際の現場で働きながら仕事を学んでいきます。

一連の関門を全てクリアしたら、晴れて薬剤官になれます。自衛隊で薬剤師として働くのに8〜9年もかかることは、早く薬剤師として一人前に働きたい人にとってはデメリットです。

薬剤師自衛隊で働くのに必要な試験って?倍率は高い?

薬剤師が自衛隊で「薬剤官」として働くには、薬剤師の国家試験だけでなく、自衛隊の薬剤科幹部候補生の国家試験を受ける必要があります。

ここでは、その試験倍率や試験内容を詳しく見ていきましょう。

試験倍率

「自衛隊幹部候補生」全体の倍率は高く、少なくとも10倍以上、多い時には20〜40倍ほどあるといわれています。

ただ、薬剤師が目指す「薬剤科」は比較的倍率が低い傾向にあり、競争率は5〜6倍程度です。

自衛隊で薬剤師が働けると知っている人が非常に少なく、薬学部出身で自衛官を目指す人が少ないことが理由です。

自衛隊全体と比べると倍率は低いものの、それでも6分の1しか合格できないので決して低い倍率とは言い切れません。

試験内容

試験は1次と2次に分かれ、1次試験は筆記試験、2次試験は小論文試験・口述試験・身体検査があります。

1次の筆記試験は一般教養と専門の2つで構成され、人文科学や社会科学などを問う薬剤師の国家試験とは全く違う知識が必要とされます。

2次試験の身体検査は細かな合格基準が定められているため、身体検査の基準を満たしていないと、どれだけ優秀だったとしても合格できません。事前にしっかり検査項目を確認しておきましょう。

どんな薬剤師なら自衛隊に入れる?応募資格や条件について解説

一般の薬剤師とは異なる薬剤官、つまり自衛隊の薬剤師として活躍するには、冷静な判断力やリーダーシップ、環境順応力、集団行動が得意であることなどが必要となってきます。

英語力もあると、海外活動の際、他国の部隊とのコミュニケーションに活かせるので、英語が使える薬剤官は緊急時にとても重宝されます。

このようなスキルとは別に、自衛隊幹部候補生になるために必須の応募資格や条件もあります。詳しく見ていきましょう。

自衛隊幹部候補生

自衛隊幹部候補生の応募資格には「20歳以上28歳未満で大学を卒業または卒業見込みの者」「日本国籍を有する者」の2つの条件があります。

2次試験では身長や肺活量、視力や聴力、慢性疾患の有無など細かな身体検査の合格基準が定められているため、合格するにはこれらも全て基準をクリアしている必要があります。

また、入隊後初めの1年間厳しい訓練に耐えられる体力・忍耐力も必要です。実際に自衛隊の薬剤師として活躍するようになってからも、海外のインフラの整っていない地域や災害現場で活動をする中で、強靱な体力は必要不可欠です。

薬剤師になって、自衛隊で働く!募集はどうやって見つける?

自衛隊に入隊する薬剤師は年1回募集しており、自衛隊幹部候補生試験が年1回開かれます。募集要項は自衛官募集のホームページに随時掲載されます。例年3月から応募受付を開始するるので、事前にチェックしておきましょう。

応募の仕方などの詳細は、全国各地に設置されたカレッジリクルータ(自衛隊に関する外部の質問に答え、幹部候補生に助言する陸海空の自衛隊の幹部自衛官)、もしくは募集コールセンターに電話して問い合わせることもできます。

薬剤師として自衛隊で働く上で不安なことは、プロに相談しよう!

ここまで読んでみて「自衛隊の薬剤師に興味はあるけれど、不安も残る。プロに相談して他と比較したい」という方は、ぜひ転職エージェントを利用して、プロのコンサルタントに相談してください。

薬剤師向けの主な転職エージェントをそれぞれの特徴や強みとともにご紹介します。

薬キャリエージェント

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ファルマスタッフ

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リクナビ薬剤師

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マイナビ薬剤師

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まとめ

自衛隊の薬剤師である薬剤官は、薬剤師の中でも非常に珍しい職業です。

自衛隊はタフさが必要な現場なので、人によって向き不向きがあります。特に重い体力的負担や不規則な生活に陥りやすいなど、薬局や企業で働く薬剤師とは職場環境が大きく異なります。

薬剤師の試験に加え、年齢制限や自衛隊幹部候補生試験もクリアしなければならず、狭き門であるともいえます。

しかし、国内外の人道支援を通じて国の安全と平和を守るという、高い使命感が求められる仕事です。その分、年収や福利厚生に恵まれ、やりがいもあります。社会貢献に興味がある薬剤師の方は、自衛隊の薬剤師を前向きに検討してみてください。