薬剤師の今後の需要は?将来も必要とされる薬剤師になる方法も紹介

かかりつけ薬剤師などの新しい制度を知るたびに、現在のままの働き方で将来的に生き残れる薬剤師でいられるのか不安になる人も多いのではないでしょうか。薬剤師に求められる役割は、現代と昔では大きく異なってきています。

では、将来的にも必要とされ続ける薬剤師でいるためには、今何をすれば良いのでしょうか。現在の薬剤師を取り巻く状況を解説しながら、今だからこそ薬剤師がすべきことや今後のために意識しておきたいことを解説していきます。

薬剤師という職業は将来なくなる?薬剤師の今後の需要とは

一昔前は安定した職業であった薬剤師ですが、実は現在では薬剤師は将来的に必要なくなるという意見もあります。

なぜ薬剤師は将来なくなると言われているのか、薬剤師を取り巻く環境をしっかりと確認しておきましょう。

薬剤師不足から一変!需要と供給が崩れ「薬剤師が余る」と言われている

薬学部が4年制から6年制に変更になった頃は、新卒の薬剤師も減り「薬剤師不足」だと言われる状況が続いていました。

しかし、薬学部が6年制になってから数年が経過してから状況が一転して「薬剤師は余る」「薬剤師はもう要らない」と言われることも少なくはありません。

薬学部の定員増

薬剤師が不要だと言われる原因になった理由として、大学における薬学部の定員が増えて薬剤師の母数自体が増えたということも挙げられます。以前のように薬剤師の需要に供給が追い付かない状況ではありません。

たとえば文部科学省の資料によれば2004年には10,415人であった薬学部の定員が10年後の2014年には13,406人にまで増えており、薬剤師自体の数が急増しています。

「薬剤師は不要」という声もある中で、将来的に薬剤師になりたいと考える学生の数は年々増えています。そのため優秀な薬剤師の数も増えていて、薬剤師の生き残り競争は厳しくなってきていると言わざるを得ません。

医療費の削減

実は現在、医療費の削減のために薬学部の数自体が減らして薬剤師の数を抑制しようという動きが出てきています。

現在は抗がん剤を中心とした高額の新薬の登場や、平均寿命が延びていることによる高齢者の医療の需要の増加が背景にあり、医療費の削減が審議会などでたびたび話題になっているのは耳にしたこともあるでしょう。

この医療費には保険制度などを維持するための予算だけではなく薬剤費も含まれ、医薬品を調剤する薬剤師の数を制限することで医療費の増加に歯止めをかけようという動きもみられています。

実際、医療費の削減のために医学部の数を減らそうという動きも見られており、今後はそうした動きが薬学部や薬剤師の数の抑制にも波及していくであろうことは想像に難くありません。

AIの登場により、なくなる

「専門性の高い薬剤師の業務はAIが発達してもなくなることはない」と勘違いしている人も多いですが、実は薬剤師の主な業務こそAIによってなくなる可能性が非常に高い業務です。

薬剤師の主な役割として、飲み合わせに問題のある薬が処方されていないかどうかや、患者本人の体質に合った薬が処方されているかをチェックする業務があります。

しかし、こうした重複調剤や飲み合わせの問題は薬剤師の力を借りなくても、適切なデータを入力したAIを用意することで十分にこなせるのではないかと言われています。

機械的に医師の処方箋通りに調剤を行うだけの仕事しかしていない場合は、AIの方がヒューマンエラーを起こさないと思われてしまうリスクが高まります。

薬剤師の20年後はどうなっている?薬剤師の需要を予測

では、将来的に薬剤師の仕事はどうなるのでしょうか。現在薬剤師として働き始めたばかりだったり薬剤師を志望しようと思っていたりする人は将来性が気になるところでしょう。

実際に薬剤師の仕事の将来性はどうなっているのか、20年後の未来の薬剤師の需要を予測していきます。

今後の需要・将来について厚生労働省はなんと言っているのか

厚生労働省が新設している「かかりつけ薬剤師」などでもわかる通り、従来通りに単なる処方箋通りに調剤をする薬剤師は既に求められていません。

かかりつけ薬剤師として患者の処方を積極的に提案できたり、地域に密着した医療の一環として在宅制度にも対応できたりするような薬剤師の姿が求められています。

厚生労働省は決して薬剤師を不要だと考えてはいませんが、従来のままの仕事では将来的に需要は減っていくだろうと予測されます。

仕事内容はどうなる?つまらないと感じる人は多い?

薬剤師の仕事内容も、以前までとは大きく変わるでしょう。今後は正確な調剤だけではなく薬剤師にも積極的な処方提案が求められる可能性が高くなってきます。

薬剤師として身につけた専門的な知識を活かす場は広がる一方で、以前よりも勉強しなければならない内容は格段に増えることが予想されます。

ただし、現在の状況では薬剤師に薬を処方する権利はないので、せっかく勉強しても知識を十分に活かすことができないとして不満に感じる人も決して少なくはないでしょう。

年収は上がる?それとも下がる?

今までよりも仕事内容の専門性が高くなる薬剤師ですが、残念ながら年収はそれほど大きく変わらないことが予想されます。

場合によっては今よりも年収が低くなる可能性もあるでしょう。

国として医療費を削減しなければならないので、薬剤師の給与保障を十分に行うことができません。

年収が下がるのはもちろん、薬剤師の仕事としてAIよりも優れている価値を発揮できなければ今まで通りに働くことすらも難しい状況になってしまうかもしれないので注意しましょう。

薬剤師の今後の需要についてよくある質問

クエスチョン

薬剤師の今後の需要を気にしているのは全ての薬剤師に共通している悩みごとです。

ここでは薬剤師の今後の需要について、よくある質問と回答を4つ紹介していきます。将来的な働き方が気になる方は参考にしてください。

海外における薬剤師の需要はどう?

アメリカを始めとする海外では、日本よりも薬剤師の需要は格段に高く、また活躍の場も日本と比べると圧倒的に広いと言われています。

実はその理由として、海外の薬剤師の働き方は日本における薬剤師の働き方とは大きく違っているということが挙げられます。

たとえば、アメリカではインフルエンザなどの予防接種は医師ではなく薬剤師が薬局で行うことができます。

また、ドーピングなどの検査も行うスポーツファーマシストの需要も日本より圧倒的に高く、そのため海外の薬剤師は日本における薬剤師と違って近い将来に職を奪われる心配はほぼありません。

パート・派遣薬剤師など、働き方によって需要は増える?

薬剤師は多様な働き方ができるため、今後も色々な働き方をする薬剤師が増えていく可能性が高いと言われています。

現時点でも、以前のフルタイムの正社員ばかりだった状況とは異なりパートタイムや派遣社員など、異なる働き方をする薬剤師は増えてきています。

今後も、たとえば夜勤が多い職の人に対応できる薬剤師など、働き方改革の影響で薬剤師の仕事の場も広がっていくかもしれません。

フルタイムや正社員に限らず薬剤師として働くことができれば、配偶者の転勤や出産などによってブランクができても、再就職して薬剤師として活躍することもできるでしょう。

男性薬剤師の将来は?

職業によって男女の働きやすさが違う職が存在しているのも事実ですが、実は薬剤師としての職務を考えた場合、薬剤師の男女差はそれほど大きな影響を与えません。

薬剤師に限らず、現在は女性の転勤に帯同する男性や、産休や育休を取ることができずに退職する道を選ぶ男性も決して珍しくはないでしょう。

そうした男性薬剤師にとっても、多様な働き方ができるということは再就職をする際の大きな助けになってくれることは想像に難くありません。

今薬剤師を目指すのはあり?後悔はある?

厳しい状況にある薬剤師の仕事ですが、現在薬剤師を目指すことによって新しい働き方を自分自身の手で生み出すことができる可能性も高く、現在でも志望する価値の非常に高い仕事であることは間違いありません。

薬剤師として今まで通りの働き方を想定している場合は、今から薬剤師として働いても想定以上に職務が多く給料が低く、後悔してしまうかもしれません。

ただし、海外のように薬剤師の専門性を活かして医師に処方を提案するような働き方をしたいと考えているのであれば、将来的に自分で需要を創出できるやりがいを見出すことができるでしょう。

今後も必要とされる薬剤師になるために!どんなことに気をつければ良い?

薬剤師 辞めたい

先ほど「薬剤師はAIにとってかわられるかもしれない」ということを紹介しました。では、将来的に必要とされ続ける薬剤師にはどうすれば良いのでしょうか。

今後の薬剤師の働き方において、工夫していく必要があることや身につけておきたいスキルを5つ紹介していきます。

「人」にしかできないスキルを上げる

処方箋通りの間違わない調剤はAIの方が得意かもしれませんが、患者自身に寄り添った処方を提案することは人間の薬剤師にしかできない貴重なスキルの一つです。

先ほど紹介したようにAIは重複調剤などをチェックすることはできますが、現在の技術では患者本人の体調や食生活、生活リズムや当日の気温などを把握した総合的な判断はできません。

実際に患者が処方の通りに飲めているのか、飲めていないのであればどうすれば飲めるようになるのかといった改善策を考えるような「人」にしかできないスキルを磨いていきましょう。

地方×小規模の病院・薬局に勤める

地方の小規模な病院や薬局に勤めることで、患者一人一人により寄り添った調剤が可能になります。

地域に密着した医療に貢献することで、今までとは違った働き方ができるようになるでしょう。

都市部の薬剤師は、病院薬剤師も薬局薬剤師も多忙で日々の業務に忙殺されてしまいがちです。

これでは、なかなか新しい働き方を自分で考える時間を持つことができません。

都市部だけにこだわらず、患者と向き合うためにあえて自分で地方の小規模な病院や薬局に転勤するのも生き残りのために必要かもしれません。

思い切って転職する

薬剤師の就職先は病院や薬局だけではなく、製薬メーカーや医薬品卸の管理薬剤師としての就職先もあれば、最近はスイッチ医薬品の台頭によりドラッグストアでも需要が急増しています。

単に調剤だけではなく、薬剤師独自の視点で病院や薬局以外で働くことで自分に適した働き方を見つけることもできるでしょう。

病院や薬局の薬剤師として働くことにこだわらず、薬剤師の専門性を活かした転職先を探してみるのもおすすめの選択肢です。

高い専門性を持った「専門薬剤師」「認定薬剤師」になる

医療が高度化している中で、がん専門薬剤師などの専門性の高い薬剤師になることができれば、さらに積極的に医師の処方に対して自分の意見を反映することができるようになります。

医師に「糖尿病専門内科医」などの専門医がいるように、薬剤師もがんだけではなく様々な分野の「専門薬剤師」や「認定薬剤師」という高い専門性を持った薬剤師がいます。

薬学生を指導することができる「認定指導薬剤師」の他、糖尿病療養指導士や栄養サポートチーム専門療法士としての資格を持つことで在宅医療にも貢献することができるでしょう。

薬剤師としての専門性を高めるだけではなく、地域医療の貢献のためにはどのような資格を取っておくと便利なのかを考えてみるのも良いのではないでしょうか。

英語を学んで、グローバルに活躍できるようになる

薬剤師として活躍できるのは日本だけではありません。たとえば今後日本国内で薬剤師の需要が完璧になくなってしまった時は、英語を学んでおくことで海外での活躍の道を選択することもできるでしょう。

海外の進出に限らず、日本国内でも海外旅行客を対象とした調剤を行うためには英語は必須のスキルです。自分の住んでいる地域に訪れる外国人の母国語を覚えるのも、薬剤師としての活躍の場を広げるための一つの手段になるでしょう。

薬剤師におすすめの転職サイト3選

薬剤師 転職

では、薬剤師が転職を考える時にはどのようなサイトが良いのでしょうか。専門性の高い職ですので、通常の転職サイトだけではなく専門的な転職サイトを使うことで、満足のいく求人が見つかる可能性がアップします。

薬剤師におすすめの転職サイトを3つ紹介していきますので、転職を考えている薬剤師はぜひ参考にしてください。

薬キャリエージェント

薬キャリエージェント

薬剤師向けの転職サイトは多数存在していますが、その中でも薬キャリエージェントは薬剤師登録数も多く信頼性の高いサイトです。

正社員やパート、派遣社員といった雇用形態を選べるのはもちろん、病院薬剤師になりたいか薬局で調剤を行いたいのか、ドラッグストアでOTCなどを中心に売っていきたいのかという希望を詳細に選択することができます。

登録も無料で、企業や病院が出していない非公開の求人の案内ももらえるので、すぐに転職を考えている薬剤師であれば登録しておいた方が色々な情報を得ることができるでしょう。

在宅医療に貢献できたり漢方に詳しかったりするなど、自分のスキルを活かしてマッチする職場を探すことができます。専門性を活かしたい人は、ぜひ登録を検討してみてください。

ファルマスタッフ

ファルマスタッフ

19年間も薬剤師の転職支援を行っている、薬剤師向けの転職サイトの中でも老舗扱いされているのがファルマスタッフです。

特に仕事時間に注目して求人を探すことができ、土日や祝日は働けなかったり18時までには仕事を終えたかったりなどという希望に沿える求人を探すことができるので、育休後の女性薬剤師に人気のあるサイトです。

転職サイトでは本人が希望する場合を除いて個人との直接的な面談を行っていないサイトも多いですが、ファルマスタッフは遠方などで面談が難しい状況を除いて基本的には面接も行っています。

メールや電話では伝えることができないニュアンスの希望なども聞き取ってもらえるので、就業時間や働き方にこだわりたい人は利用してみると良いでしょう。

リクナビ薬剤師

リクナビ薬剤師

新卒の大学生や一般的な転職を考えている人も多く利用しているリクナビですが、薬剤師向けの専門的な転職サイトも運営しています。

「いつから転職したいか」という転職時期に応じて紹介する案件数を調整してくれるため、転職したい気持ちが強ければ強いほど良い求人に巡り合える可能性が高くなります。

一般的な学生や営業職などの転職を支援する際に培った企業との関係性があるので、非公開求人の数もとても多くて、業界の動向を知るための情報入手を目的として登録している薬剤師も多いと言われています。

もちろん希望の雇用形態や働きたい地域を選ぶこともできるので、配偶者の転勤に帯同することになった際にも心強い味方になってくれる転職サイトとなるでしょう。

すぐには薬剤師不足はなくならないけど、スキルアップする心がけは忘れないようにしよう

薬剤師の仕事は将来的に大きく変わっていくことが予想されます。

すぐにAIに取って代われることはないかもしれませんが、安心してスキルを磨くことを怠っているとせっかく国家資格を持っていても今後も安定して仕事を続けることが厳しくなってしまう可能性もあります。

現在薬剤師として活躍している人もこれから薬剤師として活躍していきたいと思っている人も、自分自身のスキルアップを忘れずに積極的に学んでいくようにしましょう。