この記事では、派遣薬剤師のメリット・デメリット、向いている人・向いていない人について詳しく解説しています。
派遣薬剤師になろうか迷っている人は、ぜひチェックしてみてください。
派遣薬剤師のメリット
薬剤師の働き方には、正社員やパートだけでなく「派遣薬剤師」という選択肢もあります。
「派遣薬剤師に興味はあるけれど、実際正社員とどこが違うのか分からない…。」
そういった方のために、メリットや特徴を以下にまとめました。
- 高時給
- 正社員より勤務時間の融通が利く
- 福利厚生も充実している
- サービス残業がない
- 人間関係に悩まない
高時給
求人サイトを見てみると、派遣薬剤師の給料は高いように思えませんか?
都心部では少し低い傾向がありますが、時給3,000〜4,000円、中には5,000円台の高額な求人も目につきます。
実際の時給例 | 時給額 |
---|---|
東京都足立区 | 時給2,800円 |
新潟県柏崎市 | 時給3,800円 |
北海道旭川市 | 時給4,500円 |
高額なのには、もちろん理由があります。
派遣薬剤師の勤務形態は、決められた期間のみ勤務し、期間が終われば別の勤務先に移動する、というものになっています。
つまり、勤務先の都合で契約が終わってしまうのです。
新しい薬局で数ヶ月経ち、ようやく慣れてきたあたりで契約期間が満了してしまうと大変ですよね。
次の職場で、また業務を覚えなおしたり人間関係を一から作り直したり、普通に勤務するよりも負担が大きいです。
そのため、通常の社員よりもより高い時給が設定されています。
いろいろな薬局を経験して、給料もたくさん欲しい!という方には、大きなメリットです。
正社員より勤務時間の融通が利く
正社員だと、基本的に1日8時間程度、週5日勤務というのが一般的です。
シフト制の薬局だと、早番や遅番などもあり、その薬局の体制に合わせる必要があります。
遅くまで働ける人がいないからずっと遅番で、残業続きで大変…という方もいらっしゃるのではないでしょうか。
派遣薬剤師は、契約した日数・時間のみの勤務でOKです。
派遣会社に登録すると、コンサルタントが条件にあった求人を探してくれます。
あらかじめ「残業はできない」、「この曜日しか働けない」といった条件をコンサルタントに伝えれば、自分の希望に近い職場で働くことができます。
また、勤務してみるとはじめに聞いていた話と違う部分が出てくることがあります。
最初に聞いていた条件と違うことがあれば、コンサルタントを通して改善を求めることができます。
間に入ってくれる人がいるので、直接言うのが苦手な人でも安心ですね。
福利厚生も充実している
「派遣薬剤師だと福利厚生がないのではないか?」と不安な方もいるかもしれません。
しかし、派遣薬剤師も派遣会社の福利厚生を利用することができます。
派遣会社によって差はありますが、
- 産休・育休の制度
- e-ラーニング受講代の補助
- 健康診断やインフルエンザの予防接種費用の補助
などがあります。
福利厚生が充実しているところもあり、レストランやテーマパークの割引といった、大企業と同じようなサービスが受けられる場合もあります。
また、ぜひ確認しておきたいのが、「薬剤師賠償責任保険」に対応してくれるかどうかです。
大手のところは大抵保険の費用を負担してくれ、手続きも行ってくれます。
派遣会社を選ぶときは、念のため確認しておくといいでしょう。
サービス残業がない
派遣薬剤師は決められた時間のみ勤務する契約です。
そのため残業を強制されたり、もし残業した場合にその分の給料が払われないといったことはありません。
薬局の状況によっては、残業をお願いされることがあるかもしれませんが、その分の給料はきちんと支払われます。
それは、派遣薬剤師は派遣会社に守られているからです。
もし派遣薬剤師にサービス残業をさせるような薬局があれば、その薬局は派遣会社から薬剤師を紹介してもらえなくなる恐れがあります。
そのため、サービス残業や無理なことを求められる確率は少ないです。
「タイムカードを切った後にまだ仕事を続けなければいけない…」なんてことがあれば、それは立派な契約違反です。
改善してもらえるよう、話し合いましょう。
人間関係に悩まない
派遣薬剤師は、契約期間が過ぎればその職場での勤務は終わりになります。
「この期間だけ」と割り切ってしまえば、人間関係の悩みは少なくできます。
もちろん気持ちよく働くために、お互いに気遣いあって接することは大切です。
また、仕事もしっかりすることは大前提です。
薬剤師は狭い空間で仕事をするので、人間関係でつまづいてしまうと仕事がやりづらくなり大変です。
しかしもし、「この人とはどうも合わないな…」「この人は言い方がきつくてなるべく話したくない…」という人がいても、その期間だけと考えれば耐えられそうではないでしょうか。
もしも仕事に支障が出るほど、人間関係がこじれてしまった場合は、早めにコンサルタントに相談しましょう。
派遣薬剤師のデメリット
このように、派遣薬剤師は「契約で決まった範囲で」働けるのでメリットが多く感じられます。
しかし、人によってはデメリットになってしまう部分もあります。
どのようなものがあるのか、一般的なものを以下に解説します。
- 勤務先を選べない
- 復職が難しい
- 患者さんとの関わりはない
- 長期間、同じ職場に居られない
- スキルアップ・キャリアアップは難しい
勤務先を選べない
派遣薬剤師をする上で問題となるのが、「自分の希望する条件の薬局がいつも見つかるわけではない」ということです。
派遣薬剤師だと、基本的には契約期間が終われば、別の薬局に移らなければなりません。
更新になる場合もありますが、薬局の状況によるので確実には言えないです。
次の薬局もすぐに希望にあうところが見つかればいいのですが、中々見つからない場合もあります。
新しい職場を探すのは、結構負担になりますよね。
契約が終わる時期になり、更新もなさそうだ…となったとき、日中は仕事をしながら夜は職探し、というのは疲れがたまってしまいます。
また、希望に沿う勤務先が見つからなければ、多少妥協をして就職しなければならないこともあります。
自由を求めて派遣薬剤師になったのに、勤務先を選べないのは本末転倒ですね。
復職が難しい
派遣薬剤師は、一度休職すると復帰するのが難しいことがあります。
こう書くと、「あれ、自分の希望する条件で働けるんじゃないのか?」と不思議に思う方もいらっしゃるのではないでしょうか。
派遣薬剤師が行く現場は、基本的に人手不足であることがほとんどです。
そういったところでで求められるのは、「即戦力で働ける」薬剤師です。
「即戦力が欲しくて派遣さんをお願いしたのに…」と思われてしまっては、職場内での立場が悪くなってしまうかもしれません。
もちろん薬局によっては、ブランクありの薬剤師でもきちんと指導し、成長させてくれるところもあります。
しかしブランクがある方が復職する際には、派遣薬剤師は辞めておいた方が無難でしょう。
患者さんとの関わりはない
薬局によりますが、派遣薬剤師には調剤と監査だけお願いしたい!というところがあります。
そういったところにあたってしまうと、患者さんと接する機会がほとんどなく1日が終わってしまう場合があります。
患者さんと接する機会が少ない期間が続くと、投薬の勘が失われてしまうことがあります。
次の派遣先で、投薬をお願いしたい!という薬局にあたってしまうと、勘が戻るまで苦労する方もいるようです。
投薬なしの薬局に当たってしまうと、「人の役に立ちたくて薬剤師になったのに…」という方にとっては、物足りなくなってしまうかもしれません。
業務内容については、事前にコンサルタントからしっかり情報をもらい、希望にあったところなのか確認しておくことが大切です。
長期間、同じ職場に居られない
正社員であれば、同じ会社、同じ薬局に雇われているので、一般的に数年は同じ場所ではたらくことが多いです。
人事異動があっても、よっぽどのことがなければ数か月で別の薬局に移らなければならないといったことはないでしょう。
パートだと10年以上同じ薬局で、患者さんともすっかり顔なじみ…という薬剤師もいます。
しかし派遣薬剤師の場合は、「人手が少なくなってしまう期間のみ」という形で、期間を決めて雇用されます。
前の項目にもありましたが、人手不足の要因が解消されれば契約を切られてしまい、別の仕事先を探さなければなりません。
せっかく築いてきた人間関係もまた一からやり直しになってしまいます。
新しい職場を探すのも大変なので、長く同じところで働けないのはデメリットになってしまいます。
スキルアップ・キャリアアップは難しい
基本的に派遣薬剤師には、役職や昇進というものはありません。
勤務態度や経歴によって時給がアップすることはありますが、一般的な企業におけるキャリアアップは難しいでしょう。
また派遣薬剤師は、忙しい薬局で即戦力として活躍してくれるのを期待されています。
そのため派遣先からは、これから勉強してスキルアップしたい!という薬剤師よりは、すでにある程度経験豊富な薬剤師が求められます。
派遣薬剤師として派遣会社所属になるよりも、正社員として薬局に雇用される方が、勉強の機会は多くあります。
勉強会に参加したり、e-ラーニングの受講費が補助されたりする制度があります。
また、認定薬剤師の申請費用も会社が出してくれたり、幅広い機会が用意されています。
スキルアップを望むならば、正社員の職場を選んだ方が無難でしょう。
派遣薬剤師に向いている人
これまで、派遣薬剤師の様々なメリットとデメリットを見てきましたが、条件によっては普通に勤務するよりも派遣薬剤師の方がいい場合があります。
ここでは派遣薬剤師に向いている人について、解説していきます。
短期間でお金を稼ぎたい人
やはり、派遣薬剤師は「時給が高い」ということが大きなメリットの一つです。
都心部でも2,500円から、場所によっては3,000~4,000円という高額な時給で勤務できることがあります。
フルタイムで勤務すれば、正社員の年収を超えるのも夢ではありません。
また、派遣には「単発派遣」といって、1日のみ勤務する形態もあります。
単発派遣は通常よりも高額な時給であることが多いので、「この日だけ勤務して稼ぎたい!」という方には便利です。
ただ、単発派遣ができる人には条件があるので、働く際は注意してください。
プライベートをきちんと取りたい人
プライベートを大事にしたい人にも、派遣薬剤師はオススメです。
自分の希望を派遣会社に伝えることで、条件に沿った求人を紹介してもらえます。
ただし大切なのは、「自分が働ける範囲を事前にしっかり伝えておく」ということです。
残業ができないのに、少し残業をお願いされるような薬局に勤めてしまうと、お互いに辛くなってしまいます。
どこまでできるのか、コンサルタントとしっかり相談しておくといいですね。
短期間でがっつり稼いで旅行に行きたい!資格を取る勉強をしたい!といった方には、派遣薬剤師はいい選択肢となるでしょう。
ママ薬剤師などで働ける時間が限られている人
上の項目と同様、働ける時間が限られている人も派遣薬剤師がオススメです。
「この時間までに子供が帰ってくるから正社員では働けない…」
「介護があるのでこの曜日しか働けない…」といった細かい事情のある方は、コンサルタントにしっかり伝えておきましょう。
特に子育て中のママ薬剤師の方には、派遣薬剤師は人気の働き方になっています。
子供が生まれて正社員では働けないけど、パートになると給料が減ってしまうとお悩みの方は、派遣薬剤師を検討してみてもいいでしょう。
派遣薬剤師には向いていない人
メリットが多いように感じられる派遣薬剤師ですが、求める条件によってはデメリットになってしまう部分もあります。
やっぱり止めておけばよかった…とならないためにも、以下のような希望をお持ちの方は派遣薬剤師はオススメできません。
同じ職場でずっと働きたい人
デメリットの項目にもあるように、派遣薬剤師は人手が足りないときのみ、期間限定で勤務することが多いです。
つまり、薬局の都合によって、契約期間が終わればそこでの勤務は終了してしまいます。
同じ職場で長く働いていると、処方元の傾向を把握できたり、患者さんとの関係を構築していく良さがあります。
また職場の人と仲良くなって、楽しく働けるようになるというメリットもありますね。
そういった継続することが好きな人は、派遣薬剤師は止めておいた方がいいでしょう。
スキルアップ・キャリアアップをしたい人
派遣薬剤師が求められるのは、即戦力となってくれることです。
そのためスキルアップの勉強の機会などは、通常の調剤薬局やドラッグストアに比べると少ないことが多いです。
勉強の時間は自分で作っていく必要があります。
自分で勉強会の情報を調べて、参加していくモチベーションの高い人なら問題ないですが、日々仕事で忙しいと難しいですよね。
もし勉強会や学会などに参加し、スキルアップ・キャリアアップを求めるのであれば、制度が充実している大手の調剤薬局に就職するのがオススメです。
管理職になりたい・マネジメントをしたい人
管理職として複数店舗をまとめたり、部下のマネジメントに興味がある人は、派遣薬剤師では難しいでしょう。
派遣薬剤師が行う業務は、基本的に「調剤・監査・投薬」の薬剤師の基本的な業務です。
働く期間が決まっているので、新人の育成など時間がかかる業務はできないことが多いでしょう。
昇進して管理職として活躍したり、人材育成・マネジメントがしたい方は、正社員として調剤薬局やドラッグストアに就職するのを検討してみてください。
派遣薬剤師の求人が豊富な転職サイト
派遣薬剤師を始めよう!と思っても、いろいろな転職サイトがあってどれを選んだらいいのか迷ってしまいますよね。
派遣薬剤師の求人が探せる転職サイトのうち、オススメのサイトを以下にご紹介します。
まずは複数比べてみて、自分にあったところを見つけていくのがいいでしょう。
薬キャリエージェント
薬キャリエージェントは、医療業界で高い知名度を誇る東証一部上場のエムスリーグループとSMSが運営する、薬剤師向けの大手転職サイトです。
年間20,000人もの薬剤師が利用し、その登録者は業界トップとなっています。まずこの転職サイトから利用して、問題ないでしょう。
膨大な求人数と、コンサルタントの質の高さから、転職満足度は90%を超えています。
コンサルタントはスピード対応にもこだわっており、最短即日・最大10件もの求人を紹介してもらうことができるようです。
ファルマスタッフ
ファルマスタッフは、大手薬局チェーンの日本調剤グループが運営する薬剤師向けの転職サイトです。
ファルマスタッフの最大の特徴は、「転職相談に力を入れている」という点です。
転職相談の満足度は96.8%となっています。
また、日本調剤のグループ会社が運営しているので、調剤薬局への転職や教育環境が充実しています。
キャリアアドバイザーとゆっくり・じっくり考えながら、転職を進めていきたいという人におすすめです。
リクナビ薬剤師
リクナビ薬剤師は、国内最大手の人材紹介業者であるリクルートグループが運営する薬剤師向けの転職サイトです。
リクナビ薬剤師は、転職支援のノウハウが豊富に蓄積されているため、優秀な担当者が多いです。
また、リクナビ薬剤師は早くて3日で転職ができる「スピード転職」を実現しており、即日最短、最大10件もの転職を紹介してくれます。
すぐにでも転職したいという人は、マイナビ薬剤師がおすすめです
長期で考えるなら大企業の正社員を目指そう
最後に、派遣薬剤師のメリット・デメリットを再度紹介します。
- 高時給
- 正社員より勤務時間の融通が利く
- 福利厚生も充実している
- サービス残業がない
- 人間関係に悩まない
- 勤務先を選べない
- 復職が難しい
- 患者さんとの関わりはない
- 長期間、同じ職場に居られない
- スキルアップ・キャリアアップは難しい
派遣薬剤師は、人手不足を埋めるための即戦力として重宝されます。
だからこそ、高時給で勤務時間に融通が利くのがメリットですが、正社員と比べて安定雇用・スキルアップ可能ではないのがデメリットです。
長期で安定した雇用やスキルアップなどを望む方は、大企業に勤めることをおすすめします。