就職先を探そうとする時、一般的には誰もが就職活動をするでしょう。
その中でも薬剤師は、どちらかというと他の職業よりも仕事を見つけやすい職業です。
それゆえに、薬剤師の資格を取ったらどこに就職しようかと迷う人も多いでしょう。
一言に薬剤師といっても、その就職先によって、仕事の内容や給料など異なる点が多いです。
ここでは、新卒薬剤師が就職先を選ぶときの参考となるように、それぞれの年収や気を付けたいポイントなどを取り上げていきます。
目次
新卒薬剤師の就職先割合
新卒薬剤師が選ぶ就職先の割合は、
- 薬局(調剤薬局・ドラッグストア)がおよそ5割
- 病院がおよそ3割
- 医薬品関係企業がおよそ1割
- その他の衛生行政機関または保健衛生施設、大学などがおよそ1割
となっています。
薬剤師には、2年に1度、氏名や住所、勤務先の種類や名称などを保健所に届け出ることが義務付けられていて、それをもとに、厚生労働省は薬剤師の統計報告書を作成しています。
近いところで、平成28年度12月31日現在における報告書を見てみると、29歳以下の新卒薬剤師の人数は、およそ4万人となっています。
そのうち、およそ5割の約2万人が調剤薬局・ドラッグストアなどの薬局に就職しています。
また、およそ3割の1万3千人が病院に、およそ1割の3900人が医薬品関係企業に、そしてその他の人が、衛生行政機関または保健衛生施設、大学などに就職しています。
新卒薬剤師の年収
薬剤師全体としての年収は、平均544万円となっています。
そして新卒薬剤師で見た場合、全体としての年収は、平均370万円となっています。
ではその年収が、それぞれ働く場所によってどのようになっているのかを見ていきましょう。
調剤薬局
調剤薬局に勤める薬剤師の初任給は、22万円~30万円(平均で26万円前後)となっています。
年収で見ると、初年度で350万円~400万円です。
その後、将来的に年収は450万~700万円(平均500万円)となっていきます。
また、管理薬剤師になればその分手当が付いて、収入アップにつながります。
大手チェーンの薬局では、収入はやや低めの設定となっていますが、薬剤師不足が加速している地域など、やや高めの設定となっている地域もあります。
ドラッグストア
ドラッグストアに勤める薬剤師の初任給は、25万円~35万円となっていて、この金額は、病院や調剤薬局など他で働く薬剤師よりも高めとなっています。
ドラッグストアでは、薬剤師手当というものが月に5~10万円ほど付く所があるため、このような高い収入が得られるようになっています。
年収で見ると、初年度でも350万円~450万円、中には500万円を超える企業もあります。
また、将来的には500万~800万円(平均650万円)の年収が見込まれます。
収入面を一番に考える人には、ドラッグストアは魅力的となっています。
病院
病院に勤める薬剤師の初任給は、20万円~25万円、また年収で見ると、初年度で300万円~350万円となり、他の薬剤師の中では一番低くなっています。
けれども、国公立の病院薬剤師は公務員となるので、定年まで昇給がきちんとあり、将来的な不安が少ないのが特徴です。
平均年収は400万~650万円ですが、夜勤があるところでは、夜勤手当がついたり、薬局長などの管理職になれば、その分手当が付いて収入アップとなります。
製薬会社
製薬会社に勤める薬剤師の初任給は、22万円前後、また年収で見ると、初年度で300万円~450万円です。
薬学部卒というのはあまり関係なく、他の理系学部卒の人と同じような収入になります。
けれども、長いキャリアを積んでいくことにより年収アップが見込め、将来的な年収は600万~1200万円(平均720万円)と、他の薬剤師よりも高い収入が見込めます。
勤める企業によって大きく異なり、特に外資系の企業では高くなる傾向があります。
新卒薬剤師が就職先を選ぶ上で気をつけるべきこと
薬剤師の就職先として考えられる所は、様々な場所があります。
そして、その中から自分が就職先として選ぶ基準は、やりがい、収入、職場の雰囲気や働きやすさなど、その人によって様々です。
迷いながら選ぶ就職先ですが、その中でも、選ぶ際に気をつけたいポイントをいくつかご紹介します。
必ず一度は職場に訪れる
まず就職先を考える時に、「ここがいいのでは?」と気になった職場には、実際に自分でそこに出向いて、どのような職場なのかを見てみましょう。
実際の職場ではどのような人達が働いているのか、環境や雰囲気はどうなのか、そしてどのような仕事がされているのかなど、自分の目で見て感じ取ることが大切です。
現場で仕事をしている方に時間を取ってもらうことが可能であれば、是非、話を伺ってみましょう。
職場によっては、新卒見込みの人などを対象に、見学会を行っている所もあります。
そこでの仕事のやりがいや苦労している点など、また将来的なビジョンなどを是非聞いてみて、その先、自分がそこに勤めた場合をイメージしてみるといいでしょう。
病院などでは、薬局内だけではなく、病棟や他職種の方の仕事ぶりを見させていただいたりすれば、そこでのやりがいなどを見つけることもできます。
是非一度は、職場を訪れてみることをお勧めします。
年収の高さだけで職場を選ばない
職場を選ぶときは、年収の高さだけで判断しないようにしましょう。
実際に就職先を選ぶために、お給料などの年収も気になる所ではあります。
しかし、薬剤師としてのやりがいは、年収だけでは決められません。
自分は何をすることがやりがいにつながるのか、まずはそのことについて考えましょう。
また、年収が高いということは、それだけ仕事内容が大変なこともあります。
時間外勤務の残業が多い、24時間体制で勤務しなければならない、一人薬剤師でなんでもすべて一人でやらなければいけないなど、環境も様々です。
月収・年収などのお金の面だけではなく、勤務時間や就業場所の人数、休みなどの福利厚生面などの条件も見て、年収だけに捕らわれず、総合的に判断して職場を選びましょう。
キャリアビジョンを立てる
薬剤師として、自分はどんな風になりたいのか、何を目標とするのかなどを考えて、将来的なキャリアビジョンを立てましょう。
薬剤師の資格を取れば、求人は常にどこかであり、それほど苦労はしなくても就職先を探すことはできるでしょう。
けれども、将来的なビジョンを立てないまま就職してしまうと、その後、仕事をしているうちに「何かが違う」と思ってしまうことが出てくる可能性もあります。
まずは、自分の薬剤師としての姿を思い浮かべてみましょう。
患者さんにしっかり寄り添うため、深く臨床を知り、医師や看護師、その他のコメディカルスタッフとも連携を取りながら勤められる病院薬剤師となりたいのか…。
それとも、将来的には地域医療に取り組んで、在宅訪問などができるような薬局薬剤師になりたいのか…。
そしてその自分の立てたキャリアビジョンに合う就職先を選びましょう。
新卒薬剤師に関してよくある質問
これだけ多くの就業場所や就業形態がある薬剤師です。
「新卒薬剤師として働き始めたけど、自分が思っていたのと何かが違う」、「うまくいかなかった場合はどうしよう?」、「転職って、考えてもいいのかなぁ?」など、様々な不安や疑問を持つこともあるでしょう。
ここでは、少しでもそんな疑問の助けになる点について、お話していきます。
新卒薬剤師が転職するなら何年目?
一般的に、薬剤師としてある程度の経験を積んだ2~3年目だと言われています。
まず、1年足らずで辞めてしまった人の場合、転職先では「忍耐力のない人」「また長く勤めてもらえない人」というイメージを与えてしまって、採用してもらえない可能性があります。
それとは違って、勤続2年以上の人になれば、「調剤経験(実績)も積み、社会的マナーも身についている人」という見られ方をして、即戦力にもなり、採用してもらえる可能性が高いです。
また、あまり長く経験を積んでからの転職は、以前の職場とやり方が違った場合に戸惑うこともあり、うまくいかない場合があります。
それゆえに、転職にベストなタイミングは、勤続2~3年目がいいと言えるでしょう。
新卒薬剤師はすぐにパートで就業できる?
新卒薬剤師でも、パートという就業形態を選ぶことは可能です。
新卒で職に就こうとする時、ほとんどの人はまず正社員という雇用形態を選ぼうとするでしょう。
しかしなんらかの理由があって、始めからパートとして勤務したい場合、無理せずパートという雇用形態を考えてみましょう。
募集要項では、正社員以外にもパート・アルバイトでの募集している求人があります。
その中で、「新卒可」や「未経験可」となっている職場に応募してみましょう。
ただ、「新卒なのに、なぜパートとして働きたいのか」という疑問を持たれることもあるでしょう。
「あまり仕事の責任を負いたくないから」とか、「楽に仕事をしたいから」などといった理由では、採用する側として納得はしてもらえません。
きちんと「結婚するため家庭を中心にしたいから」とか「親の介護があるから」など、納得してもらえる明確な理由がある人は、それが伝わるように採用側に話をして応募しましょう。
新卒にあたる年齢は何歳まで?
新卒にあたる年齢は、一般的に学校を卒業後3年までという指針があるため、何歳まで…と断定することはできません。
近年、国は、新卒とするのは卒業後3年まで…という指針を提示しています。
卒業にあたる年齢は人それぞれ違うため、何歳までと言えないのです。
まず大学生になる時に浪人する人もいれば、入学してから留年する人もいるでしょう。
また、社会人になって違う職業に就いていた人が、薬剤師を目指して大学に入学する場合もあります。
そのため、大学を卒業する時の年齢は一定ではなく、何歳まで…と言うことができません。
就職求人の募集要項には、「何歳以下」や「何年以降に卒業した者まで」という書き方がされています。
新卒薬剤師におすすめの求人が豊富な転職サイト・エージェント
就職・転職をする薬剤師のための求人サイトは、いくつかあります。
もし「キャリアアップのために転職したい」とか「別の分野で活躍したい」、また「雇用形態を変えたい」などと思うことがあれば、これらの転職サイトを活用し、相談するのもいいでしょう。
代表的な薬剤師の転職サイトをご紹介します。
薬キャリ
薬キャリは、エムスリー株式会社が運営している薬剤師の転職サイトです。
47都道府県、全雇用形態に対応し、求人数は4万件以上を誇っています。
連携している他の転職サイトの求人情報も見られ、大手の企業に限らず、地域密着型の調剤薬局や、病院、様々な求人情報を持っているのが特徴です。
このサイトに登録すれば、未公開情報なども得られ、豊富な求人から自分の希望に合ったものを選ぶことができます。
また、コンサルタントがメールや電話で相談に乗ってくれ、手厚いフォローが受けられます。
他にも求人情報だけではなく、「m3.com」などの臨床に役立つコンテンツを提供していたり、薬剤師が普段感じている疑問などに対して意見交換ができる掲示板の運営、また最新の医療情報の提供などもしています。
リクナビ薬剤師
リクナビ薬剤師は、日本の就職・転職をリードしてきたリクルートグループが運営する、薬剤師専門の転職(就職)サイトです。
「薬剤師がやりがいの持てる職場に就業し、雇用する企業・医療機関も発展していく世界の創出」ということをビジョンとして、薬剤師と就職先との出会いをサポートしてくれます。
求人数は35000件以上とあり、大手の薬局から町の小さな薬局、ドラッグストア、製薬会社、病院など、自分の希望にあった求人を紹介してもらえます。
また、登録者だけに知らされる非公開求人情報もあります。
薬剤師専任のキャリアアドバイザーがいて、求人先との面談の日を調整してくれたり、合否の連絡など、わずらわしいことも請け負ってくれます。
ただし、雇用形態として派遣の紹介はしていません。
薬剤師に限らず、派遣での就職先を探したい場合は、別にリクナビ派遣というサイトがあります。
マイナビ薬剤師
マイナビ薬剤師はマイナビグループが運営していて、5年連続で利用者満足度No.1を誇る、薬剤師向けの転職支援サービスです。
求人件数は55000件以上、そして全国15拠点でサービスを展開しています。
電話やメールだけで紹介する他の会社とは違って、キャリアアドバイザーと直接会って話し、親身な面談を受けることができます。
そのキャリアアドバイザーは、求人先に直接出向いて現場の薬剤師から話を聞いたりしているため、職場状況をよく把握しています。
それを踏まえた上で、求職中の薬剤師個人の状況を聞き出し、親身になって相談にのってくれます。
そして求人先との面接の機会を作ったり、条件交渉をしてくれます。
平日が忙しい人のために休日相談会が開かれたり、各地で出張の相談会が開かれたりもしています。
もちろんネット上での登録が可能で、非公開の情報もたくさん持っています。
ファルマスタッフ
ファルマスタッフは、東証一部に上場している「日本調剤グループ」が行っている、転職支援サービスです。
ファルマスタッフを運営する株式会社メディカルリソースは、全国15ヵ所を拠点として、薬剤師の転職相談に応じています。
もちろんインターネットでも登録ができ、求人情報を見ることができます。
それでも希望に合う情報が見つからない場合には、就職希望エリアの担当コンサルタントが相談にのってくれるような体制ができています。
求人情報は47都道府県に対応していて、その数は55000件以上となっています。
求人情報だけではなく、ファルマスタッフDI室といって、服薬指導に活かせる医薬品情報を提供していたり、キャリアやスキルアップにつながる情報の提供もしています。
ヤクジョブ
ヤクジョブは、クラシスが運営する薬剤師の転職サポートサービスです。
業界最多数90000件以上という求人数を持ちながら、質のいい情報を提供しています。
また、全国の病院・調剤薬局・ドラッグストア・企業…と幅広い求人を扱っており、正社員・パート・契約社員・派遣社員・紹介予定派遣といった様々な雇用形態にも対応しています。
薬剤師専門のコーディネーターが、新しい職を探している薬剤師に対して転職の動機などのヒアリングをし、その人に合った働き方を見つけるお手伝いをしてくれます。
個人のライフステージやキャリアプランによって、働き方は変わるもの…。
そういう考えのもと、相談にのってくれるコーディネーターは、頼れる存在となります。
まとめ
薬剤師といっても、就職先によって仕事内容など様々です。
また新卒であれば、求人情報は大学などに出され、応募は早い者勝ちのような状況になり、焦ってしまうこともあるかもしれません。
新卒薬剤師が色々な面で迷うことは、当然出てくるでしょう。
けれどもありがたいことに薬剤師の求人は他職種と比べると数多くあり、何年か経ってからの転職も可能となっています。
キャリアアップのため、収入を増やしたいため、自分の目指すものが変わった…など、節目節目で見直し、考えることも可能です。
まず新卒薬剤師にとって大切なのは、薬剤師としての経験を積むことです。
そして、経験を積むことで見えてくることもあります。
焦らずに一歩ずつ、そして将来に向かって、自分らしく働くことを目指しましょう。